ギラン・バレー症候群は、身体を守るはずの免疫機能が誤って末梢神経を攻撃して
しまうことで、手足のしびれや筋力低下などが起こる病気です。
風邪や胃腸炎などの感染症にかかった後、1~3週間ほどしてから症状が現れる
ケースが多く、短期間で急速に悪化することがあります。
多くの患者さんは治療やリハビリによって回復しますが、重症になると歩けな
くなったり、呼吸をする筋肉が弱くなったりする可能性もあります。
「いつもと違う手足のしびれ」「階段を上れない」「急に歩きにくくなった」
といった症状がある場合は、早めに脳神経内科を受診することが大切です。🏥
ギラン・バレー症候群とは?🧠
ギラン・バレー症候群は、急性の免疫性ニューロパチーを代表する病気です。
脳や脊髄から身体の各部分へ情報を伝える「末梢神経」が免疫によって傷つけられ
、主に手足のしびれや力の入りにくさが現れます。
症状は足先から始まり、数日から数週間かけて足、腕、顔、呼吸に関係する筋肉
へと広がることがあります。
一般的には、神経症状が現れてから2~4週間ほどで症状が最も強くなり、その後
、徐々に回復へ向かいます。ただし、治療後に一時的な再悪化がみられるケース
もあるため、医療機関での継続的な観察が必要です。
発症前に風邪や下痢を経験することが多い🤧
ギラン・バレー症候群では、手足の症状が出る前に、次のような感染症を経
験していることがあります。
- 風邪のような上気道感染
- 発熱やせき
- 激しい下痢や腹痛
- ウイルス性の感染症
感染症が治った後、1~3週間ほどしてから手足のしびれや筋力低下が現れるの
が特徴の一つです。
感染した細菌やウイルスに対して作られた抗体が、末梢神経の表面にある成分を
病原体と間違えて攻撃することが、発症の仕組みの一つと考えられています。
特にカンピロバクター感染との関連が知られており、加熱不足の鶏肉などによる
食中毒の数週間後に、手足の麻痺や顔面神経麻痺、呼吸困難などを起こす場合
があります。
ギラン・バレー症候群の主な初期症状⚠️
代表的な症状は、左右両側の手足に現れる筋力低下やしびれです。
手足の筋力低下
次のような日常動作が難しくなることがあります。
- 立ち上がりにくい
- 歩くと足がもつれる
- 階段を上れない
- 走れなくなる
- つま先立ちができない
- 両腕を上げにくい
- ペットボトルのふたを開けられない
- 箸やペンを持ちにくい
「年齢や疲れのせい」と考えてしまうことがありますが、数日単位で症状が悪
化している場合は注意が必要です。
手足のしびれや痛み
手先や足先に、次のような感覚が現れることがあります。
- ジンジンする
- ビリビリする
- 感覚が鈍い
- 触られている感覚が分かりにくい
- 腰や足に痛みを感じる
筋力低下に比べると、感覚障害が軽い患者さんもいます。
顔や目に現れる症状
末梢神経の障害が顔に及ぶと、次のような症状が現れます。
- 物が二重に見える
- 目をしっかり閉じられない
- 顔の片側または両側が動かしにくい
- 口から水や食べ物がこぼれる
- 表情を作りにくい
話す・飲み込む機能の低下
口や喉の筋肉に影響すると、次のような症状が出ることがあります。
- ろれつが回らない
- 声が出しにくい
- 食べ物を飲み込みにくい
- 水を飲むとむせる
誤嚥や呼吸障害につながる可能性があるため、早急な受診が必要です。
呼吸や自律神経の症状
重症になると、呼吸に関係する筋肉や、血圧・脈拍を調節する自律神経に影響
が及ぶことがあります。
- 息が苦しい
- 深く息を吸えない
- 横になると息苦しい
- 動悸がする
- 脈が乱れる
- 急に血圧が上下する
- 立ち上がったときにめまいがする
重症例では人工呼吸器による管理が必要になる場合があります。日本神経学会は
、呼吸筋まで麻痺が及ぶ患者さんが一定数いることを紹介しています。
すぐに救急車を呼ぶべき症状🚑
次のような症状がある場合は、自分で病院へ行こうとせず、救急車を要請
してください。
- 急に立てなくなった
- 歩けない、転倒を繰り返す
- 手足の力が急速に弱くなっている
- 息苦しい、呼吸が浅い
- 食べ物や水を飲み込めない
- ろれつが回らない
- 顔の筋肉が動かしにくい
- 動悸や脈の乱れがある
- 強いめまいや意識の異常がある
ギラン・バレー症候群は、発症から短期間で症状が進行することがあります。
「明日まで様子を見る」ことで重症化する可能性があるため、呼吸・嚥下・歩行
に異常がある場合は緊急対応が必要です。
何科を受診すればよい?🏥
ギラン・バレー症候群が疑われる場合は、**脳神経内科(神経内科)**を受診します。
近くに脳神経内科がない場合は、まず内科や救急外来を受診し、次の内容を
医師に伝えましょう。
- いつから症状が始まったか
- どこにしびれがあるか
- 立つ、歩く、階段を上ることができるか
- 症状が日ごとに悪化しているか
- 1~3週間前に風邪や下痢がなかったか
- 呼吸や飲み込みに問題がないか
- 最近使用した薬や受けた治療
受診前に自分で治そうとしたり、無理に運動したりせず、できるだけ早く医師
の診察を受けてください。
病院ではどのような検査をするの?🔍
診断では、症状の経過や身体診察に加えて、複数の検査が行われます。
神経伝導検査
手足の神経に弱い電気刺激を与え、神経を伝わる信号の速さや強さを調べる検査です。
末梢神経のどの部分が、どの程度障害されているかを確認します。
脳脊髄液検査
腰の部分から細い針を刺し、脳や脊髄の周囲を流れる脳脊髄液を採取します。
ギラン・バレー症候群では、脳脊髄液に特徴的な変化が現れることがあります。
ただし、発症直後には異常がはっきりしない場合もあります。
血液検査
血液中に、神経の表面にある糖脂質を攻撃する「抗糖脂質抗体」がないか調べ
ることがあります。
ただし、抗体が検出されなくてもギラン・バレー症候群を否定できるわけでは
ありません。
MRIやCTなどの画像検査
脳梗塞、脊髄の病気、椎間板の異常など、手足の麻痺を起こす別の病気を除外
する目的で行われます。
ギラン・バレー症候群の診断では、症状の経過、神経学的診察、神経伝導検査、
脳脊髄液検査などを総合的に判断します。
ギラン・バレー症候群の治療法💉
歩けないほどの筋力低下がある場合や、症状が進行している場合には、主に免
疫グロブリン静注療法または血漿交換療法が行われます。
免疫グロブリン静注療法(IVIg)
免疫グロブリンというタンパク質を点滴で投与し、異常な免疫反応を抑える
治療です。
血漿交換療法と比べて実施しやすく、患者さんの身体的負担も比較的少ないため
、選択されることの多い治療法です。
主な副作用として、次のような症状がみられる場合があります。
- 頭痛
- 発熱
- 吐き気
- 発疹
- 肝機能の異常
- 血栓症や腎機能障害など
副作用の可能性は患者さんの状態によって異なるため、治療中は医師による
管理が必要です。
血漿交換療法
血液から血漿と呼ばれる液体成分を取り除き、神経を攻撃する抗体などの有害
な物質を減らす治療です。
主な副作用や合併症には、次のようなものがあります。
- 血圧低下
- アレルギー反応
- 吐き気
- 出血しやすくなる
- 低カルシウム血症
- カテーテルに関連する感染症
免疫グロブリン静注療法と血漿交換療法は、いずれも有効性が認められている
標準的な治療です。患者さんの年齢、重症度、合併症、病院の設備などを考慮
して選択されます。
重症の場合は集中治療が必要
呼吸筋が弱くなった場合は、人工呼吸器を使用して呼吸を補助します。
また、自律神経の障害によって脈拍や血圧が不安定になった場合には、集中治
療室で継続的な管理が行われることがあります。
ギラン・バレー症候群では、手足の麻痺だけでなく、呼吸、嚥下、脈拍、血圧
の変化を注意深く観察することが重要です。
回復にはリハビリも大切💪
症状が落ち着いた後は、筋力や日常生活動作を回復させるためにリハビリ
を行います。
リハビリには、次のような目的があります。
- 関節が固まるのを防ぐ
- 筋力の低下を防ぐ
- 寝たきりによる血栓を予防する
- 座る、立つ、歩く動作を取り戻す
- 着替えや食事などの日常動作を練習する
- 社会復帰や仕事への復帰を支援する
ただし、回復途中に無理な運動を行うと、強い疲労が残ることがあります。
自己流で負荷を増やさず、医師や理学療法士、作業療法士の指示に従うことが
大切です。
ギラン・バレー症候群は治るの?🌱
多くの患者さんは、症状が最も強くなった後、数週間から数か月かけて少しず
つ回復します。
半年ほどで大きく改善する人もいますが、回復に1年以上かかる場合もあります。
日本神経学会によると、多くの患者さんが回復する一方、発症から1年後も歩行に
介助を必要とする人が一定数いるとされています。
後遺症として残る可能性がある症状には、次のようなものがあります。
- 手足の筋力低下
- しびれや痛み
- 疲れやすさ
- 歩行障害
- 手先の細かい動作の難しさ
- 不安や気分の落ち込み
見た目には回復しているように見えても、強い疲労感やしびれが長く続くこと
があります。周囲の理解や、生活・仕事の負担を調整することも重要です。
再発することはある?
ギラン・バレー症候群は、基本的には一度の経過で回復へ向かう病気です。
ただし、少数ながら再発する患者さんもいます。また、症状が長期間進行した
り、良くなったり悪くなったりする場合には、慢性炎症性脱髄性多発根ニュ
ーロパチーなど、別の病気との区別が必要になることがあります。
一度回復した後でも、再び手足のしびれや筋力低下が現れた場合は、早めに脳神
経内科を受診してください。
予防する方法はある?🍗
ギラン・バレー症候群そのものを確実に予防する方法は、現在のところあ
りません。
ただし、原因の一つと考えられているカンピロバクター感染を防ぐため、
鶏肉の加熱不足には注意が必要です。
- 鶏肉は中心部まで十分に加熱する
- 鶏刺しや鶏のたたきなど、生・半生の鶏肉を避ける
- 生肉を扱った包丁やまな板をよく洗う
- 生肉用と野菜用の調理器具を分ける
- 調理後や食事前に手を洗う
新鮮な鶏肉であっても、カンピロバクターが付着している可能性があります。
「新鮮だから生でも安全」とは限りません。
まとめ|急速に進む筋力低下を見逃さないで⚠️
ギラン・バレー症候群は、免疫機能の異常によって末梢神経が傷つき、手足のし
びれや筋力低下が急速に進む病気です。
特に注意したいポイントは次のとおりです。
✅ 風邪や下痢の1~3週間後に発症することがある
✅ 足先からしびれや筋力低下が始まることが多い
✅ 数日で歩けなくなる場合がある
✅ 呼吸や飲み込みに影響することがある
✅ 治療には免疫グロブリン療法や血漿交換療法がある
✅ 回復には適切なリハビリが重要
✅ 息苦しさや急激な筋力低下は救急対応が必要
「手足に力が入らない」「昨日より歩きにくい」「息が苦しい」といった症状
がある場合は、自己判断で様子を見ず、速やかに医療機関を受診してください。
※本記事は一般的な医療情報を分かりやすく紹介したもので、診断や治療の代
わりになるものではありません。症状がある方は、脳神経内科などの医療機関
にご相談ください。
症状の緊急性が伝わるよう、「救急車を呼ぶ目安」を目立たせた構成にしています。

